今さら聞けないラジコンの話し『スプリング&ダンパーの役目って何?』
読者の皆様、こんにちは!(‘◇’)ゞ
今回は『スプリングとダンパー』についてのお話であります。
例のごとく今回も、かなり『個人的経験に基づく見解』も含まれておりますので、専門家の方や超ベテランの方はそっとページを閉じて下さいね・・・(苦笑)
はい・・・準備は宜しいでしょうか?
では、先に進みましょう!
◎目次
◎スプリングの役目とは?
スプリングの主な役目は、『路面からの衝撃を吸収する』ことであります。
『え?他にも役目があるのでは?』と、思う方がおられるかも知れませんが、本当にこれだけなんです。(笑)
スプリングが無いと、路面の凸凹の衝撃がダイレクトに、車体に伝わってしまうのは理解できますよね。
それをスプリングの ”反発力” で一旦吸収するのであります。⇦ここ重要①
そして副次的な要素として、『車体の重量を支えてタイヤに掛かる負荷を緩和する』と言う効果もあります。⇦ここも重要②
実は、この ”タイヤに掛かる負荷を緩和する” と言う考えは、自動車が最初に登場した時代には一切考えに入っていませんでした。
とにかく乗り心地を良くするのに、必死だったのであります。
副次的要素に目を向ける様になったのは、舗装路面が登場して、路面とタイヤのグリップが飛躍的に向上する様になってからだと思います。
参考までに、以前トヨタ博物館で見てきた『19世紀初頭のイタリアのレーシングカー』の写真を貼っておきます。👇
『イソッタ・フラスキーニ ティーポ1』と言うクルマです。
前後のサスペンションは、簡素なリーフスプリングのみであります。
しかもリヤは左右を共有していますね・・・。
恐らく、駆動系のスペースを確保するためだと思います。
8000㏄の大排気量エンジンを搭載していて、優勝経験もある車両だそうです。
話しがだいぶそれてしまいましたが(笑)、路面からの衝撃を緩和したり、車体の重量や荷重を支えたりするのがスプリングの役目だと覚えておいて下さい。
◎スプリングの選び方
先ずは、兎にも角にも『スプリング』をしっかりと選ぶのが重要です。
では、どれくらいの固さのスプリングを選べば良いのでしょうか・・・。
先にも書いたように、スプリングの役目は ”衝撃を吸収する” ことであります。
その衝撃より反発力の強いスプリングを選ぶ必要があります。
簡単に選ぶ方法として、先ずは ”底突き” しないスプリングを選びましょう。
クルマを走らせてみて、ロールがあまりにも大きく、ある一点から急に車の動きが変わる時は底突きのサインです。
この現象は、先の ”ここも重要②” の部分になります。
車体の荷重を支えきれなくなって、全荷重がダイレクトにタイヤに掛かってしまう時に起こります。
オフロードバギーでは、ジャンプの着地時の衝撃音でも分かるので、その時は間違いなく底突きしています。(酷い時は着地の衝撃で転倒したり、車体やサスが破損したりします。)
よくある間違いで、『柔らかかったらイニシャル(スプリングにスペーサー等をかまして加圧する)を掛ければいいんじゃないの?』と言うのを聞きます。
これは間違いで、イニシャルをいくらかけてもスプリング自体の固さ(バネレート)は変わりません。
ですから、スプリングの最大荷重値も変わらないことになります。
意外な様に感じられますが、本当の話であります。
スプリングをあらかじめ加圧しておくことで、スプリングの動き始めるポイントがズレるだけなんですね。
初期作動が固くなるので、『スプリングが固くなった』と勘違いしてしまうのであります。
イニシャル調整は、車高の微調整に使うのが正しい方法ですので、スプリングが柔らかいと感じた時は迷わずバネレートの高い物に交換しましょう。
スプリングについていろいろ調べていたら、自分の地元である浜松市で、ラジコン用スプリングを小ロットから製作してくれるメーカーを見つけました。👇
特殊な二段スプリングや、オリジナルカラーのスプリングも作ってくれるそうです。
興味のある方はアクセスしてみて下さい。
◎ダンパーの役目とは?
先のスプリングの説明で ”ここ重要①” と言った場所を思い出してください。
『反発力で一旦吸収する』と書いてありましたね。
これはどういうことかと言うと、スプリングは『一旦吸収した衝撃を跳ね返す役目』もあります。
ですから、ダンパーの無いスプリングだけのラジコンを走らせると ”ポヨンポヨン” と跳ねるのはそのせいであります。
ここでダンパーの出番であります!
ダンパーは、オイルなどの抵抗を利用して『スプリングの動きを抑制する』役目があります。
下の模式図を見てもらえると分かり易いと思います。👇
どうでしょうか?
明らかに『ダンパーあり』の方が、車体の無駄な上下動が少ないですね。
これがダンパーの効果によって、スプリングの無駄な反発力が抑制されている効果であります。
模式図では、分かり易い様に大きめの動きにしていますが、ほぼ実際の動きに近いと思います。
◎ダンパーの中身(構造)はどうなってる?
既にご存知の方も多いとは思いますが、改めておさらいしたいと思います。
RCカーに使われている一般的なダンパーの構造を、簡単な模式図にしてみました。👇
非常にシンプルな構造ですが、ダンパー全てにおいての基本的な構造とも言えます。
これを実際に動かした時に、ダンパーの中で何が起こっているかも図にしてみました。👇
ピストンに開いている『オリフィス』と呼ばれる穴を、オイルが通過する時の抵抗を利用して、スプリングの動きを抑制しているのがこの図でも分かると思います。
◎ダンパーのセッティング方法
さて・・・ここまでの話で、何となくダンパーのセッティングにおいての重要な部分が分かって来たのではないでしょうか?
その重要な部分とは『戻り側(ダンパーが伸びる側)の減衰力』であります。
先にも書いたように、『衝撃を吸収したスプリングが戻ろうとする力』を抑えるのが、ダンパーの主な役目であります。
その戻ろうとする力さえ制御できれば、車体の動きは安定すると言う理屈になります。
では、『圧縮側(ダンパーが縮む側)の減衰力』はどうなのか?と言うとですね・・・。
正直、圧縮側については、あまり考えない方が良かったりします・・・。(笑)
この部分はスゴくデリケートで難しいんですよね・・・。(経験上)
圧縮側の減衰力は『車体の加減速に対しての姿勢制御』の、ほんの味付け程度に効かせる場合がほとんどです。
過度に効かせても、あまり良い事がありません。
実車のダンパー調整機構でも、伸び側しか調整が出来ない物も多くあります。
あえて使いどころを言うとすれば、フルブレーキやフル加速を多用する様な場面で、初期の急激な沈み込みを緩和する、と言うぐらいでしょうかね・・・。
ラジコンのダンパーでも、伸圧を別々に調整できる機構の物も出てきている様ですね。👇
【WRAP-UP NEXT「KC可変減衰バルブ ビッグボアピストン用(12pcs) 」】
ちなみに自分は、『タミヤ TRFダンパー用 テーパーピストン』を使って圧縮側減衰力を少なく調整しています。👇
テーパーの付いている面を上にして組むことで、同じオイルを使用していても圧縮側だけ、減衰力を少なくセッティングできます。
◎ダンパーの効果が分かる動画
だいぶ古い動画になりますが、ダンパーが車体の姿勢制御に、大きく影響していると言うのが良く分かる動画です。
ダンパーの役目は『スプリングの動きを抑制する』ことと言うのが理解できますね。
RCバギーのダンパー効果が良く分かる車載動画であります。👇
フロントサスがかなり激しく動いているのが分かりますね。
この様な状態でも、衝撃を吸収しつつタイヤをしっかりと路面に押さえつけているのは、スプリング&ダンパーの効果であるのが理解できます。
実車の世界では、一番ダンパーの効果が見て取れるカテゴリーと言えば『WRC(世界ラリー選手権)』でしょう。👇
ジャンプ後の姿勢などは、見事なまでに安定していますね。
空力の効果も大きいかも知れませんが、サスペンションによるメカニカルグリップが高い証拠だと感じました。
◎まとめ
今回も、ちょっとマニアックなネタになってしまいましたが、如何でしたでしょうか?
スプリングは『衝撃や荷重を吸収する物』で、ダンパーは『スプリングの余分な動きを抑制して、車体の姿勢制御をする物』、と言うのが理解できたと思います。
先の部分でも書きましたが、先ずはスプリングの仕様を決めてから、その後でクルマの余分な動きをダンパーで調整していくのが正しいセッティング方法であります。
ちなみに極端な例を挙げると、柔らかいスプリングに効きすぎのダンパーを組み合わせると、一度縮んだスプリングが戻って来なくなり、底突きの嵐になります。(笑)
でも考え方によっては、逆に極端な仕様で走らせてみるのも、色々と分かって面白いかも知れませんね。
では、また次回のおススメをお楽しみに~!(=゚ω゚)ノ
【追記】エアレーションダンパーについて
読者の方からの『エアレーションダンパーについても知りたい』との、ご要望にお応えしまして急遽追記してみました。
エアレーションダンパーについては、自分自身があまり詳しくは知らないのと同時に、オイル類にエアを混入して使う手法に懐疑的であったのもあり、見て見ぬふりをしていました。(笑)
しかしながら、良い機会なのでちょっと調べてみました。
先ずはエアレーションダンパーの構造から 👇
空気室でもあるダイヤフラムがありませんね・・・。
その代わりに、ダンパーオイルに多数の気泡が混ざった状態になっています。
実際に使用する時は、もっとオイルと気泡が撹拌された『乳化状態』になっているそうです。
そして、このエアレーションダンパーの目的は・・・と言うとですね・・・。
これも分かり易い様に、模式図で書いてみたのでご覧ください。👇
簡単に言うと、少ないストロークの時は柔らかいダンパーに、大きいストロークの時は硬いダンパーに、減衰力が可変するということらしいです。
路面状況が刻々と変化するオフロードバギーには、打って付けのダンパーシステムと言えますね。
しかしながら、このダンパーシステムにも弱点があります。
それは、組み方によって再現性(性能)に差が出てしまう事であります。
エアレーションダンパーの肝である、エアとオイルの混合割合がシビアであるため、初心者はかえってオーソドックスなダイヤフラム式の方が安定して組める可能性があります。
ガガ高橋さんの動画でも、2年ほど前に『松倉直人 直伝』と題して、エアレーションダンパーの組み方を紹介されています。👇
この組み方を実践すれば、常に安定した性能を発揮できるかも知れませんね。
余談ですが、実車のバイクの世界でも数年前から、SS(スーパースポーツ)に可変ダンパーが標準装備されているモデルもありますね。(既に電子制御化されていて、状況によってECUがダンパーを可変制御します。)👇
さすがにラジコンのダンパーを電子制御化するのは無理っぽいですがね・・・。(笑)
追記と言いながら色々と書いてしまいましたが、何かの参考になれば幸いであります。
『今さら聞けないラジコンの話し『スプリング&ダンパーの役目って何?』』へのレビュー
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分かりやすかったです!